防犯まちづくりのススメ

第10回「防犯性の高いアパートの認定制度」

空き巣など、建物内から財物を盗む犯罪を広く侵入窃盗といいますが、侵入された建物の内訳を見ると、一戸建て住宅が25.8%、中高層住宅(4階建て以上)が9.9%、その他の住宅(3階建て以下の共同住宅等)が25.6%であり、住宅だけで6割以上を占めることになります(H22年・警視庁)。この数字から、どの住宅類型が侵入窃盗の被害にあうリスクが高いか分かります。これは東京都を管轄する警視庁の統計なので、都内の住宅ストック約600万戸の内訳を見てみます※1。すると、上記類型で最も多いのは中高層住宅ですので、同じ共同住宅でも、アパートなど3階建て以下の共同住宅のリスクが相対的に高いことが分かります。この理由として、(1)マンションと比べてオートロックなどの防犯設備の設置率が低いこと、(2)賃貸物件が多く、入居者が独自に対策を講じることが困難であること、(3)単身向け物件が多く、不在の時間帯が長いことなどが考えられます。特に、女性の一人暮らしの場合は、不在時の空き巣だけでなく、室内における性犯罪など身体犯のリスクも高く、十分な対策が必要と言えます。

こうした背景から、NPO法人福岡県防犯設備士協会は、県と県警の後援を受けて2011年から「セキュリティ・アパート認定制度」を始めました。前回紹介した「大阪府防犯モデルマンション登録制度」と同様、計画段階と竣工後の審査を経て、認定証とプレートが交付されます。ただし、「大阪府防犯モデルマンション登録制度」の登録物件には分譲が多いのに対し、この制度は賃貸物件だけを対象としています。

認定基準では、侵入されにくい構造・設備として、照度や見通しの確保、強固な扉や窓ガラスの使用、それらへの侵入感知装置(図10-1)の設置などが挙げられています。 また、侵入された場合の対策として、緊急時に屋外へ知らせる警報装置 (図10-2)を玄関、浴室、寝室に設置することとされています。来客時にドアチェーンを掛けたまま対応するのと合わせて、いざという時には警報装置を押せる心構えも必要です。警報装置のボタンを押すと、玄関口に設置された防犯ベルや警報ライト(図10-3)が作動します。それだけで犯罪者は逃げ出すと考えられますが、警報に気付いて警察に通報してくれるような近隣関係を日ごろから作っておくことも大切です。

窓の侵入感知装置

執筆・監修:独立行政法人建築研究所 主任研究員 工学博士(東京大学) 樋野 公宏

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