第12回「防犯カメラに対する市民の態度」
防犯カメラを含む映像監視装置の市場規模はピークの2007年には2,123億円に達し(日本防犯設備協会推計)、マンションなどの私的空間だけでなく、繁華街の路上など公共空間でも防犯カメラを目にする機会が増えてきました。こうした状況について、市民はどのように感じているのでしょうか。独立行政法人建築研究所が、2008年、全国の約3千人を対象に行った調査結果を紹介します。
公共空間に設置される防犯カメラ(以下、街頭防犯カメラ)について、まず5種類の設置場所別に賛成態度を見てみます(図12-1)。自治体や警察等の公的主体が設置することを想定し、賛成~反対の5段階で回答してもらったところ、いずれの場所でも賛成派が極めて多いことが分かりました。ただし、繁華街のように匿名性が高く、比較的リスクの高い場所と比べて、自宅近くの生活道路のような身近な場所では賛成派が減ることが分かりました。なお、どの場所でも女性の賛成率の方が高くなっています。
次に、街頭防犯カメラに対する期待と懸念について、繁華街に設置する場合と、自宅近くの生活道路に設置する場合の違いを見てみます(図12-2)。繁華街では、「犯罪の発生件数が減る」(60%)、「落書きや不法投棄などの迷惑行為が減る」(41%)などの期待が大きいですが、生活道路ではそれぞれ約10%下がります。一方、生活道路では、「プライバシーや肖像権が侵害される」(19%)、「地区のイメージが悪くなる」(7%)などの懸念が比較的大きくなります。こうした懸念を強く感じる人は、設置に対する反対傾向が強くなることも分かりました。
最後に、自宅近くの生活道路に街頭防犯カメラが設置されることを想定し、5種類の設置主体別に賛成態度を見てみます。図12-3の通り、個人か組織か、民間か公的主体かによって賛成率に大きな差があることが分かりました。特に個人の設置については、「反対」「やや反対」の合計(37%)が、「賛成」「やや賛成」の合計(28%)を上回っています。ここでは、女性の方が個人による設置を嫌う傾向が見られ、むやみに日常生活をのぞかれたくないという女性心理が伺えます。
以上に示した通り、街頭防犯カメラに対する市民の態度は、設置場所、設置主体によって大きく異なります。街頭防犯カメラに対する期待は年々高まっていますが、より多くの人が賛成する形で普及するためには、その設置・運用に関して、設置場所、設置主体に応じた適切なルールを決めることが重要と言えます。
実際、公的主体が設置したり、公的な補助金を受けて地域組織が設置したりする街頭防犯カメラは、たいていの場合、厳格なルールのもとに運用されていて、設置者といえども、録画画像を自由に閲覧、提供することはできません。こうした事実を広く知ってもらうことも重要でしょう。
参考文献
樋野公宏ほか(2008)「公共空間に設置される防犯カメラへの賛成態度」、都市計画報告集Vol. 7-3、pp.45-48