防犯まちづくりのススメ

第1回「防犯まちづくり」とは?

唐突ですが「防犯まちづくり」と聞いて何を思い浮かべられるでしょうか?きっと多くの人が、町会・自治会による防犯パトロールや、街頭に設置される防犯カメラを思い浮かべるだろうと思います。いずれも正解ですが「防犯まちづくり」はもう少し幅広いものです。フラワーポットに花を植えることや、公園の壁に絵を描くことも立派な「防犯まちづくり」だというと驚かれるでしょうか(写真1,2)

このコーナーでは1年間にわたって、防犯まちづくりの考え方や事例を紹介したいと思います。

フラワーポットの設置、公園の壁に壁画を飾る

さて、防犯まちづくりの定義に戻ります。

「世界一安全な国」の復活を目指す「防犯まちづくり関係省庁協議会」は

・住民、警察等様々な主体によるソフト面の防犯活動

・住宅、学校、公共施設等の構造、設備、配置等に係るハード面の取り組み という、従来は接点の乏しかったソフトとハードを組み込み、「犯罪が起こりにくく犯罪に対して抵抗力のある まちづくりを行う」ことを「防犯まちづくり」と定義しています。

また、関係省庁協議会は防犯まちづくりの「重要な視点」として、(1)関係主体間の連携、(2)地域特性の尊重、(3)長期的視点の3点を挙げています。これらに加えて私は「総合的視点」も重要だと考えています。 以下、関連省庁協議会の解説を参考に説明します。

関係主体間の連携、地域特性の尊重、長期的視点、総合的視点
防犯まちづくりでは地域の住民・団体、自治体、学校・PTA、警察、専門家など様々な主体の連携が大切です。それぞれの主体ができることは限られていますが、連携することで様々な取り組みが可能になります。 地域の犯罪情勢、都市構造、気候、文化などの状況によって防犯まちづくりの形は異なります。このコーナーでもいくつかの事例を紹介しますが、それが日本全国どこでも使えるという訳ではありません。 防犯まちづくりは息の長い取り組みであり、直ちに犯罪件数がゼロになるというような短期的な効果は必ずしも期待できません。持続的な取り組みとすることが求められます。 まちづくりの目的は防犯だけではありません。景観、福祉、防災などの視点から見ても、総合的に暮らしやすいまちが実現するような形で防犯まちづくりを進める必要があります。

これだけで「防犯まちづくり」のイメージを持っていただくのは難しいかもしれませんね。

今回は、「一般に思われているよりも幅広い概念のようだ」ということだけでも感じ取っていただければと思います。

執筆・監修:独立行政法人建築研究所 主任研究員 工学博士(東京大学) 樋野 公宏

プロフィール 樋野氏との出逢い

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