防犯まちづくりのススメ

第15回「防犯まちづくりデザインガイド」

前回(第14回)では、日本の防犯環境設計について、個々の住宅に適用するぶんには良いが、複数の住宅を含む「住宅地」に当てはめるのには限界があるというお話をしました。こうした問題意識から、私が所属する建築研究所では、道路や公園などの基盤整備、建築物の設計の誘導、住民組織による地域運営などを通じて防犯性の高いまちづくりを実現するための手法を紹介する「防犯まちづくりデザインガイド~計画・設計からマネジメントまで」(以下デザインガイド)を作成・出版しました(2011年5月)。

デザインガイドでは、防犯環境設計をベースにして、住宅地で「開いた防犯」を実現するための「防犯まちづくりの5原則」を独自に設定しました(図表15-1)。ここでは、新たな原則として「活動の促進」や「わがまち意識」を挙げており、従来の防犯環境設計と比べて人の動きや意識を重視していると言えます。

防犯まちづくりデザインガイド

この「防犯まちづくりの5原則」を具体化するため、デザインガイドでは防犯まちづくりの要素を38の「キーワード」を用いて紹介しています。各キーワードは図表15-2のように、なぜそれが防犯上有効であるのかを説明するとともに、キーワードの内容をどう形にすれば良いのかを図、写真を多用して分かりやすく解説しています。デザインガイドはすでに千葉県習志野市の土地区画整理事業地区(奏の杜地区)の防犯まちづくりや、東京都足立区の「防犯設計ガイドライン」および「防犯設計タウン認定制度」で活用されています。デザインガイドが防犯まちづくりに関わる多くの方に活用され、「開いた防犯」の考え方が普及することを目指しています。

※デザインガイドはこちらからダウンロードしていただけます。

キーワードの一例

参考文献

・樋野公宏「"防犯まちづくりデザインガイド~計画・設計からマネジメントまで"の作成と普及」住宅vol.61-1、日本住宅協会、pp.61-68、2012.1

執筆・監修:独立行政法人建築研究所 主任研究員 工学博士(東京大学) 樋野 公宏

プロフィール 樋野氏との出逢い

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